街の短歌詠み

日々の生活や気づきを歌に詠んでいきたいです。

雨の街 (小さなお話)

いつかずっと昔、私が今の私ではなかった頃、雨ばかり降る街にいたような気がする。

f:id:misashioi33:20180320233800j:image

その街の、始終お祭りのような目抜き通りには、様々な店がある。カフェでは温かいコーヒーやココアが湯気をたて、ピロシキやドーナツが供される。

「今日も一日、雨が降り続きそうですね。いってらっしゃい」

店主の声を後に、私は曇ったガラスの嵌ったカフェの扉から出てくる。外はもう夕闇に包まれている。

 

紺色のラインの入った赤い傘と、赤に紺色の縁どりされたレインコートと紺色に赤いラインのはいったブーツという出で立ち。

銀色に光る雨は街をしっとりとさせている。街路樹のトネリコから雫がしたたる。

私はゴムのブーツを少し軋ませながら、濡れた舗道を進んでいく。

 

街は途切れない。随分、歩いた。まっすぐに伸びた道だけど、どこかでループしているようだ。さっき見かけたのとそっくりな店の前を、また通っている。

どの店の窓も湿気で曇っていて、灯は見えるけど中を覗くことは出来ない。

 

雨、雨、時々風、雨。

私はどこに帰るのだろう。ひどく疲れてきた。少し休まなくては。

 

どこかに帰りつくために、私は再びカフェの扉を開ける。

コーヒーの香りに包まれる。アイシングでデコレーションされたパステルカラーのドーナツが整列している。

「おかえりなさい。今ちょうどピロシキが揚がったところですよ」

扉が閉まると全ての窓は曇っていて、外は見えない。外から覗くことも出来ない。

雨は弱まることはあっても、止むことはない。

 

 

 

いちごパフェの記憶

お題「いちご」

f:id:misashioi33:20180318163816j:image

いちごパフェ 底に残った 淡ピンク
たぶん初恋の色している      みさ潮依

 

新宿高野の期間限定いちごパフェ。

ひのしずくという名前のいちごが半分。

(もう半分も確か熊本産のもので、名前は忘れてしまった)

でも、どちらも酸っぱくて甘くて、露地もの?の果物らしい味がした。

 

このパフェの素晴らしいところは、あくまでいちごを味わうために出来上がっているところである。

ソフトクリームは薄っすら甘いミルクを凍らせたよう。

中のクラムも甘すぎず、シャーベットは冷たいいちごピューレ。

全てがいちご達を味わうために、控え目に作りあげられている。

 

ガラス器に残ったクリームは、淡い桃色。

小さい頃、お砂糖とミルクをかけてスプーンで潰してたべたあの色だった。

自分が宝物のように大事にされていた、初恋なんかより、もっともっと甘く儚い記憶が呼び起こされた。